toriyamaranの山旅日記

登山、旅行を中心としたブログ

MENU

【読書】海が見える家 はらだみずき~あなたは本当にやりたいことをしていますか~

はらだみずき著 海が見える家の感想です。

 

あらすじ

 

入社一か月で仕事を辞めた文哉はやがて父が亡くなったことを知る。霊安室で対面した父は記憶と全く異なった風貌をしていた。父が住んでいた丘の上にある、海の見える家を片付ける過程で父の意外な事実を知ることになった。父の遺品を整理を通して、文哉はもう一度自分の人生を見つめなおす時間を過ごすのだった。

 

印象に残った言葉

文哉は呆然とした。がっかりした訳ではない。驚いたのだ。-おれにも釣れるんだ。自分の探した餌で・・・。

自給自足って、現在社会だと縁のない言葉だと思います。そのため、その大変さもやり方も自分には全く分からない。しかし、実際にやってみてできてしまうと自分の新しい発見ができる。そこで楽しんでいる自分がいることに気づけることって素敵なことだと思う。自分自身の新たな発見や気づきって面白い。

 

文哉がサーフィン中に自然に起きた危険な出来事を彼女に伝えるものの伝わらないことのむなしさ。

サーフィンで離岸流に遭遇し、命からがら生還するがその時の大変さが伝わらないもどかしさというのは、自分も山のことを登っていない人に伝えるときに良く苦労するとことだ。『景色がいい』とか『山で飲むコーヒーはおいしいとか』とか『達成感がある』とか、言葉を並べてもその時の自分の内から湧いてくる感情を伝えることは難しい。しかし、同じ山登りしている人の話であれば、そのときの感情を共感することができる。詰まるところ、人間は経験したことしか、共感できないし、だからこそ色んなことを経験することが人生の財産だということが改めて客観的に感じたシーンだった。何事もやってみないとわからない。

 

自分の人生が面白くないなら、なぜ面白くしようとしないのか。他人にどんな評価をされようが、自分で納得されない人生なんて全く意味がない。

文哉が父に言った言葉であるが、そのことをきっかけに父が自分の人生について考え、海が見える家に移るきっかけとなった。確かに、学生のころまでは、受験やスポーツは客観的なルールの元で頑張れば頑張っただけ見返りがある気がする。しかし、就職活動から急に他人に評価されることが重要になってくる。協調性、コミュニケーション能力、身だしなみと、今まであったらよかったものが急に必要なものになるのだ。しかも、その需要度は人によって千差万別だ。ゲームのルールが一気に変わる感じだ。それが分かっている人、付いていける人は極めて全うで優秀で羨ましいと感じる。しかし、一部は文哉のように就職した会社で馴染むことができず、ワイプアウト(波に乗れないこと)してしまう。他人の気持ちや考えを推し量れることって社会で生きていく上では大事なことだと思う。しかし、他人を重視しすぎるがあまり、自分をスポイルするのはあまりにも本末転倒な気がする。他人と比べやすくなり、自分の世界を大事にすることは難しい世の中ではあるが、自分が面白いと思える人生を歩み続ける努力は大事にしたいと思った次第である。

 

まとめ

人生は順風満帆ではなく、人は弱い生き物である。しかし、弱ったときだからこそ、心の薄皮が向けて世の中をより鮮明に捉え、新しい気づきを得ることができるチャンスでと思える一冊でした。

 

 

海が見える家 (小学館文庫)

海が見える家 (小学館文庫)